医療安全対策に関する総務省の勧告

本年8月、総務省は、医療安全対策に関する行政評価・監視の結果に基づく勧告を発表しました。


医療安全対策に関する行政評価・監視<結果に基づく勧告>

 

これは、医療安全管理体制の確保に係る措置の実施状況について、19都道府県、都道府県が設置する21保健所、市又は特別区が設置する19保健所及び143医療機関(病院69機関、有床診療所56機関、無床診療所18機関)を調査した結果に基づいて、総務省が勧告をしたというものです。

 

評価と勧告の内容は多岐にわたりますが、「医療事故情報収集等事業の実効性の確保」に関して以下のように言及されている点が特に目にとまりましたので、ご紹介します。

 

 ===以下「勧告」より引用===
143医療機関のうち、事故情報収集等事業に参加しているのは45機関(報告義務対象医療機関26機関、参加登録申請医療機関19機関)ある。それら45医療機関による平成23年度の評価機構への報告状況をみると、 i) 当該医療機関で発生した医療事故に相当する事案を全て報告しているものが12機関(報告義務対象医療機関9機関、参加登録申請医療機関3機関)、ii) 当該医療機関で発生した医療事故に相当する事案のうち、当該医療機関の医療安全管理委員会等での審議を経て、その一部のみを報告しているものが29機関(報告義務対象医療機関17機関、参加登録申請医療機関12機関)、iii) 業務多忙による失念等により全く報告していないのが4機関(いずれも参加登録申請医療機関) となっており、評価機構では医療事故の発生状況が十分に収集・把握できていない状況となっている。
また、上記ii)に該当する29医療機関では、発生した医療事故8,570件のうち、
319件しか評価機構に報告しておらず、その理由として、i)評価機構が求める基準のうち「医療機関内における事故の発生の予防及び再発の防止に資する事例」のみが報告対象であると解していたため(1機関)、ii)医療事故の内容が高度(又は初歩的)であるものは、他の医療機関における発生予防や再発防止につながらないとして報告から除外していたため(2機関)などとしている。 このように、一部の医療機関には、法令等で定める事故等事案の内容が十分に浸透しているとは言えない状況となっている。
 ===以上引用===

以上の状況を踏まえ、総務省は厚労省に対し、次のように勧告しました。

 

 ===以下引用===

したがって、厚生労働省は、事故情報収集等事業の実効性を確保する観点から、医療機関に対し、それぞれの機関によって判断が異なることがないように法令等で定める事故等事案の内容を注意喚起するとともに、事故等事案の報告範囲について、事故情報収集等事業による事例の蓄積を踏まえた新たな具体例の提示を行うなど、その周知徹底に引き続き取り組む必要がある。

 ===以上引用===

 

適切な医療安全対策を実効するためには、何よりもまず、事故の実態を正しく把握する必要があります。上記勧告に沿って適切な改善策が打ち出されることに期待したいです。

弁護士 堀 康司
Yasuji HORI

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