子宮脱手術後の静脈血栓塞栓症発症の予防に関して、注意義務違反があると認定した上で、血栓症発症回避の高度の蓋然性は否定したものの、発症回避により後遺症が残らなかった相当程度の可能性はあると認定し、その点の慰謝料額を金800万円と判断した事例です。
「相当程度の可能性」判決においては、損害評価(慰謝料額)の幅が狭く解釈されることも少なくありませんが、本来あるべき幅の広さを示す事例として目にとまりましたので、ご紹介いたします。
◆平成23年12月9日 東京地裁 平成21(ワ)37543号 損害賠償請求事件(医療過誤)[一部認容〈認容額800円余〉]
原告らが、被告の開設するF病院(以下「被告病院」という。)において子宮脱
の治療のために手術を受けた原告Aが肺血栓塞栓症を発症し後遺障害が残ったのは被告病院の医師らの過失によるものであるなどと主張して、被告に対し、不法行為又は債務不履行に基づき損害賠償金及び被告病院に入院した日(予備的に肺血栓塞栓症を発症した日)からの遅延損害金の支払を求めた事案
(民事第34部 森冨義明 大澤知子 西澤健太郎)