本日、日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業第30回報告書が公表されました。
今回の報告書では、組み立て方を誤った手動式肺人工蘇生器を使用した2つの事例が詳しく報告されていることを(p151以下)、共同通信などが報じています(「呼吸補助器ミスで患者死亡 組み立て方誤り蘇生に支障」)。
事例1は、MMI蘇生バッグの洗浄・組み立ての際に、逆止弁ユニットとエアー吸入アセンブリーの2カ所の部品を間違って組み立てた事例です。
事例2は、アンブバッグの膜弁の装着間違いがあった事例です。
いずれも低酸素脳症を経て死亡するという痛ましい結果となっています。
先日公開の場で行われた愛知県立病院医療事故防止対策委員会においても、同種の組み立て間違い事例(幸い健康被害は発生しませんでした)が報告されています。ヒヤリ・ハットのレベルを含めると、他にも多くの事例があるのではないかと推察されるところです。
今回の報告書のまとめは、以下のとおりとなっています。
「手動式肺人工蘇生器は組み立て方を誤ると患者に重大な影響を及ぼすことがある。
組み立て方を誤っていたとしても、抵抗や違和感なく組み立てることができ、バッグを押すことが可能な場合もある。さらに外見上ではその誤りに気づくことが困難である。
従って、手動式肺人工蘇生器を組み立てる際には、その原理・作動を十分に理解しておくことが重要であり、組み立てた後に正常に作動するかどうか、機能試験が必要である。
また、患者に使用する前にも機能試験は必要であり、統一された手順書に沿って確実に行えるよう医療機関内で取り組む重要性が示唆された。」(p157 赤字は引用者による)
間違いのない手順での組み立てや、その後の点検が必要であることは当然ですが、間違っていても違和感なく組み立てることができて外観上区別がつかないという機器の構造そのものを改善することが大切です。是非、各メーカーのエンジニアの方には、そうした改善に向けた取り組みを御願いしたいと思います。
また、あまり知られていませんが、薬事法77条の4の2は、医療機関に対し、医療機器に起因する事故を厚生労働大臣宛てに報告する義務を課しています。
同種の事故やニアミスを経験した医療機関の方は、院内での事例報告にとどまらず、他院での再発防止につなげるために、国とメーカーにも事例情報を伝えていただきたいと思います。